
深夜のコンビニにはたくさんの客が押し寄せるわけではない。そのせいか、客を見ていると非常に個性的な人が多いことに気づく。
こぎれいな身なりでしばしば深夜買い物にくる中年の女性。
いつもかごを持って店内に入るところを見るとスーパーでの買い物が多いのだろう。
ところが、買うものはいつも決まって2点。ウィダーインゼリーとチルドのケースにあるセブンイレブンオリジナルのデザート。
ある日、その女性が入ってきた。私の前を通り過ぎた背中にはなぜか歯ブラシ。
赤いセーターにまるでオナモミを投げられたかのようにブラシがくっついている。絶妙なワンポイント。
おかしくてたまらなかった。なぜ背中についているんだろう。
歯を磨いているときにセーターを着てくっついてしまったなら裏につくはずだ。想像に絶するできごとだった。
ちなみにわたしは笑ってしまいそうで指摘できなかったが、同僚が、
「背中に歯ブラシついてますよ。」と教えてあげていた。
汚い話ではない。
彼はいつもお弁当を買っていく。
「あたためますか?」と聞くと、彼はいつも
「うん。」
と、はっきりと、しかもにこりとするわけでもなく返事をするのである。
ただそれだけのために、彼は店員の間で「うんマン」と呼ばれるようになった。
「おかあさんがいない。」
夜中に泣きながらはいってくる4、5歳の女の子。
聞くと、目が覚めたらおかあさんがいなくなってたということだ。
なんでセブンイレブンにくるんだろう。明かりによってきたのだろうか。
店に置いといてもいいが、彼女は裸足だし、オーナーに見つかったら怒られそうだし、とりあえず110番した。
説明していると、緊急の連絡が取れなくなるので、そういうことは警察の一般電話番号か、駐在所にかけなおしてほしいということだった。
当然である。
警察に連絡するとしばらくして、制服警官が2人こられた。彼女に少し話し掛け、パトカーに連れて行った。
彼女はうれしそうに手を引かれていった。
別の日にも彼女は同じようにやってきた。この度も警察のお世話になった。やはりうれしそうだった。
彼女はセブンイレブンよりも警察が好きなのだろうか。
彼は膝丈のナイロンパーカ(サッカーや駅伝でよく見るベンチウォーマーのような)を着ている。
いつもその下からは生足がでている。トレンチコートなら完璧なのに。
いつも着物を着てくる30代後半(推定)の女性。小料理屋をやっていそうな感じ。
彼女はいつも、ゴングとか週刊プロレスとか、プロレスの雑誌を買っていく。
中年の男性が、雑誌の棚を、ざあーっと見てから私に近づいてきた。
「シューティーってありますか?」
サッカーの雑誌かな、とか考えていたら、
「娘に頼まれたんだけど」といってメモを見せてくれた。
CUTIE
と書いてあった。
わたしも20年くらい前、NIKEのシューズがほしかったけど、ナイキとは読めなかった。
たしかファイナルファンタジーZの予約開始日のこと。
午前0時になり、その日の始まりと共に、ひとりの中学生がやってきた。
少しためらうようなそぶりをみせつつ、「予約できますか」と聞いてきた。
わたしは知らなかったが、レジでやってみると、できるようだった。
しかし、予約が多くてオンラインがつながりにくいのか、混んでいるのか、時間がかかった。
きっとほしくてたまらない大勢のうち一部はセブンイレブンで予約したに違いない。
予約開始日に普通のお店よりはやくできるわけだ。よく考えるものだ。
夏のある早朝、主婦が弁当を買いに来た。
「昼食べるんだけど、腐らないようにあっためて。」と言う。
レンジで温めて殺菌しようというのであろう。
「よけい危ないですよ。」
と言ったが、聞かないので温めて渡した。
幸い、食中毒にはならなかったようだ。
アイスを1コ買い、100円と間違えたのかdollarを出した。
「あのー」というと、
「あ、間違えた」といってポケットを探す。
「日本円もってないや」という。
彼は空港からどうやってきたのだろう。
