
「ちょっと待って。よく見ないとオレ同じの2回買っちゃうんだよな。」
セブンイレブンの雑誌を立ち読みしながらお連れさんにそう言ったチンピラ風の男。
はたから見れば、それを聞いて笑わなければいけない舎弟分がかわいそうとしか思えないジョーク。
いくら週刊漫画の表紙がいつも似たようなものだからといって、週に2度買うやつはそうはいないでしょう。
私は単行本を2冊同じものを買ってしまったことがあるが、それは二ヶ月もたったあとのことで、それなら自分でも許せるが。
また来た。今日は舎弟が元気だ。うれしそうになにか兄貴に話している。
いつも話し好きの兄貴は相槌をさえ打たないようで、話しを変えたい様子でもあった。
舎弟は話しつづける。レジに物を置く。話しの内容は、「刑務所の中について」らしい。
舎弟の、「〜なんだってね。」という表現からして、当然彼も聞いた話しなのだろう。
ついでに上下関係もそれほどないようだった。ちょっと兄貴は塀の中のことは知らず、その関係の知識を少し取り入れた舎弟の話を聞くのは、プライドが許さないが、大きいことも言えない、といったところだろう。
今日は兄貴はひとりだった。もちろん、時々ひとりで来ることがないわけではない。
携帯が鳴った。カップラーメンに向かって何か話し掛けている。
他の客もちょっとびっくりしてそちらを振り向いた。
「今、おれんちの近くのセブンイレブンに来たんだけどさ。わかる?うちの近くの、ほら、かどにある・・・」
コンビニなんてかどにあるほうが多いだろう。
話し終えてレジを済ませ帰って行った。
十数分後、またやってきた。
めずらしく女と一緒だった。サテンの服を来た普通の女性だった。
兄貴は店の外に出て携帯で電話していた。彼女がレジにかごを置くと、彼はそのまま話しながら再び入ってきた。
「ちょっとそこでナンパした女とかわるから。」
これは彼の得意なジョークなのか。
彼女は、
「もしもし。」
とだけ言って彼に携帯を返した。
女のほうはふつうって感じだったが、この彼と一緒にいるとは不思議な女性だ。
