
わたしは時差ぼけで食欲がなく、やはり日本食に頼ることになった。
Pagliacci's のニューヨークステーキはもちろん、McDonald's のハンバーガーさえ食べたいと思わなかった。
そんな時、バークレイホテルのロケーションは最高だった。
ホテルの目の前にはラーメン屋があった。そこでラーメンを食べた時はなぜか店の女性が水をこぼし、わたしのコットンパンツは濡れてしまった。
とはいえ、その時のラーメンが無料になったわけではなかった。
ホテルの前には、Miko Sushi もあった。
わたしは生ものが苦手で、寿司はあまり好きではないのだが、食べてしまった。
それは、バンクーバーに行って寿司を食べないのはもったいない。と言われている(らしい)からである。
Miko Sushi のカウンターのところに座り、Asorted Sushi (上すし)を頼んだ。
それからバンクーバーに来たら欠いてはならない、B.C.Roll(ブリティッシュコロンビア巻)も注文した。やはり日本人には米が必要である。
次の日、ジャズライブを聴きにHollywood North という店に行った帰り、小腹がすいたので再びMiko Sushi を訪れてしまった。
その日は前日よりも混んでいて、テーブル席に座ることになったが、やはりAsorted Sushi を頼んだ。
食べ終わると、友人は天丼を頼んだ。このたびはわたしはいささか付き合えなかった。
黒いTシャツを着た、ワーキングホリデーか、学生アルバイトの日本人男性が、天丼をもってきてくれた。
「よく食べますね。」
とか言いながら。
彼はさらにいろいろ話し掛けてきた。まるで日本語を話す人と会うのが久しぶりであるかのように。
わたしは、といえば、言ってみればスランプに陥っていた。時差ぼけに起因するところが大きいと思うのだが、パン、ステーキ、じゃがいもを毎日食べる食事に耐えられなかった。
わたしにとっては、これもカナダ人になりきるために避けて通れない試練のひとつだった。
もともとご飯党だったのだ。
とはいえ、上寿司のあとに天丼は無理である。