


翌朝、目覚めてみると、いい天気だった。
バス、トイレは清潔で、シャワーからはお湯もちゃんと出た。
ベランダからはホテルのプールが見え、その先に見えるレストランではオーストラリア人らしい宿泊者が朝食をとっている。
妻は泣き疲れたようすもなく、ショックを引きずってもいないようだった。考えてみれば、わたしたちが部屋に入ったときからエアコンもきかせてくれてあって、暑いバリでも快適に寝られた。
わたしたちは朝食のために部屋を出た。
じつはそのホテルのレストランは、'97-98るるぶバリ島に載っていた。アディ・ドハルマと書いてあるからすぐにはわからなかったが。
「気軽なレストランでトロピカルドリンクを」
という水色の大きめの字の下には明るい写真。パープルのテーブルクロスの上にクタズ・サンセットというカクテル。
クタズ・サンセット。JTBるるぶより。
説明には、「小さなホテルのレストラン。すぐ裏がプールになっていて、気軽な食事が似合う雰囲気。トロピカルドリンクが豊富で、メニューはイラストつきだ。」などと書いてある。
恐怖と不安でいっぱいだった旅行前、そのページをみつけた時、この明るい写真がどれだけわたしを勇気づけたことか。
わたしたちは朝食クーポンをもらっていたので、毎朝このレストランで朝食をとった。わたしはご飯好きなのでたまには朝からナシゴレンを食べたこともあったが、たいていわたしたちが選んだのはアメリカンブレックファスト。

アディダルマレストランのアメリカンブレックファスト

同レストランのナシゴレン
トースト、卵(スタイルは選べる)、生野菜、フレッシュフルーツジュース、バリコピ(挽いた粉に熱湯を注ぎ、砂糖を入れ上澄みを飲むバリ風コーヒー)という内容。これでRp.11,200。当時のレートで約150円。これが朝食メニューでは一番高い。食べ物の安さはアメリカどころではない。
ディナーも何度かこのホテルでとった。いつもBali Haiビールを飲んだ。店員は日本語はわからないが男性も女性もフレンドリーで、落ち着いて食事ができる雰囲気でもあった。
バリにはリピーターが多いと言われている。その気持ちはわかる。
なぜかはわからないけど、わたしたちもバリにはまってしまった。そしてアディダルマにも。
デンパサールから日本への直行便は現地時間の深夜発である。レイトチェックアウトサービスがあればうれしい。
わたしたちはレイトチェックアウトを申し込まなかったので、指定どおり、12時にチェックアウトした。ところが、レセプションの人は、夕方まで部屋を使ってもいい。というのである。重いスーツケースを2コ運び出したばかりなので、もう一度、部屋に戻すのはやめたが、ランチをとったり、毎日飲んだマタハリデパートのフレッシュフルーツジュース(Rp.3,500-4,000 約50円)を最後に飲んだりして、その後、部屋で休ませてもらった。部屋はベッドメイクしてあって申し訳なかった。たぶんその日は予約がなかったのだろうが、そんないい加減なサービスがうれしい。
クタスクエアは少し遠いけれど、マクドナルドもマタハリも近いし、アディダルマのレストランもいい雰囲気なので、バリでのんびりしたいとか、においを感じたいとかいうタイプの滞在には最適だろう。
落ち着いたところで、バリの街を歩いてみて気づいたのは・・・ ドアがない!